みなさんごきげんよう。野球大好きHIDEZOです。
今回はしゃべくり007のゲストでも呼ばれた、WBCで侍ジャパンを優勝に導いた栗山英樹監督です。彼の指導法がなぜスゴイのかに迫ってみましょう。
昭和・平成型の監督を振り返ろう
まず、従来型の昭和・平成の監督です。巨人の歴代の監督、川上哲治、長嶋茂雄、王貞治。ヤクルト西武を率いた広岡達郎、南海、ヤクルト、阪神、楽天の野村克也、中日、阪神、楽天の星野仙一、中日の落合博満です。
彼らに共通するのは選手として超一流、レジェンドだったこと。名選手が監督になっています。タイプは様々です。管理型の川上、広岡。カリスマ型の長嶋、王。データ型の野村、管理&データハイブリッド型の落合、激情型の星野。手法はいろいろあるのですが共通するのは「監督が圧倒的なオーラで支配」するタイプでした。
圧倒的な支配力で選手を叱咤激励して使いこなす。これが従来の監督像だったと思います。言い換えれば高校野球の監督がそのままプロ野球の監督をやっているようなそんな感じです。選手は駒のように使われていた時代です。
こんなことを言ってはなんですが、現在の原監督は昭和の手法かつオーラが中途半端です。選手時代の実績がイマイチです。王・長嶋・野村・落合が王将・飛車角レベルとしたら、せいぜい桂馬クラス。金銀にも達していません。選手時代は超一流とは言えませんでした。それなのに監督の気分でコロコロ打順を変えたり、贔屓をされたら選手のモチベーションは下がり、実力を発揮できません。現在の読売巨人の成績を見れば彼がリーダーとしてほとんど機能していないことが明らかです。残念ながら原監督のリーダーシップは前時代的なのです。
栗山監督のリーダーシップ
栗山監督はWBCでドリームチームを結成し彼らの能力を最大限引き出すことに徹しました。中心は監督ではなく「選手」「チーム」であるという考え方です。
「フォア・ザ・チーム」の雰囲気を短期間に醸成するために最年長のダルビッシュを核にしました。61歳のオヤジが指図するのではなく36歳のダルビッシュ兄貴に選手をまとめさせたのです。理論派かつ面倒見が良いダルビッシュは見事にその役割を果たしました。かつてイチローがキャプテンシーを発揮した時は「オーラを見せる手法」でしたがダルビッシュは栗山イズムの継承者であり、若手に寄り添うやり方でコミュニケーションをとりました。その結果、中心選手も若手やサブメンバーもみな「オレはオレ」的な自己中心的な行動を取る選手はいませんでした。そこに大谷翔平が合流し圧倒的な実力と明るさでパワーが最高潮に達したと思います。
野球は勝てばいいのか?強ければいいのか?
栗山監督はWBCで侍ジャパンが優勝することの意味、そこを目指す意味を選手に強く伝えたと思います。優勝すれば日本の野球界が盛り上がり、アマチュア野球人口も増える。そしてJPBのファンも増えることを確信していました。
しかし勝つだけがすべてではありません。試合の中で選手たちが楽しみ、実力を出し切り、時に悔しがり、涙を流す。そんな本気で野球をする姿をファンに見せることで野球の素晴らしさを伝えたかったのだと思います。
プロ野球のレギュラーシーズンは140試合をやり80勝すれば優勝できます。50敗してもいいんです。しかしWBCは違う、一戦必勝。トッププロが痺れるヒリヒリした試合になるのです。メキシコ戦で負けそうになりました。調子が悪かった村上選手を信じて打たせました。結果、彼は決勝でもホームランを打ち結果を出しました。栗山監督は球界の宝である村上宗隆選手を育てることも忘れなかったのです。楽しみとは「負けたら終わりのヒリヒリ感」といってもいいのです。
コーチ陣も素晴らしかった
栗山監督を支えた白井ヘッド、吉井ピッチング、吉村バッティング、城石守備走塁、厚澤ブルペンの各コーチも素晴らしかったと思います。
選手にあれこれ指図せず、寄り添うようにサポートする栗山イズムを理解して若い選手の力を引き出しました。それは旧態依然の古い指導法。パワハラ、モラハラ、高圧的なやり方が何の役にも立たないことを明らかにしました。
選手の性格や長所短所を理解し、状況に合わせた接し方ができるコーチングができる指導者だったと思います。WBCのコーチ陣がJPBの監督になる日が来たら面白いと思いますね。
なぜ栗山監督はそれができたのか?
栗山監督は東京学芸大学を卒業し学校教員になろうとしていた選手です。しかし佐々木信也氏にプロ野球に挑戦してはどうかというアドバイスを受け、ヤクルトに入団しました。しかし彼は「並みの選手」だったのでなかなか芽が出なかった。何度も野球を辞めようとしたそうです。しかし栗山選手を支えた当時の内藤二軍監督の言葉を引用しましょう。
「なあクリ、プロ野球っていうのは競争社会だよな。1軍に上がらないと認められないよな。でも、オレはそんなことはどうでもいいんだよ。お前が人間としてどれだけ大きくなれるかどうかのほうが、オレにはよっぽど大事なんだ。だから、周りがどう思おうと関係ない。明日の練習で今日よりほんのちょっとでもうまくなっていてくれたら、オレはそれで満足なんだよ。他の選手と自分を比べるな」。内藤監督のひとことひとことが、身体のなかにゆっくりと染みこんでいきました。(『栗山魂』100頁)
「他の選手と比べるな。昨日の自分と今日の自分を比べればいい」という内藤監督の言葉は栗山監督の指導法の基本でしょう。監督コーチは、選手が野球に打ち込める環境を整える黒子なのだと。威張る王様が監督コーチではダメなのです。全権監督なんて選手もコーチも何もできなくなります。愚の骨頂です。
これからの時代、野球に限らず組織が生き生きとするためにはリーダーが人格者でなければなりません。近寄りがたいカリスマである必要はないのです。むしろ父親や兄貴のような頼もしい存在であるべきでしょう。手柄を自分のものし失敗は部下のせいにするような上司は存在価値がないのです。
プロスポーツの指導者もしっかりとコーチングや心理学を学び、選手に寄り添って一緒にワクワクする雰囲気づくりをしていただきたいものです。
今回も最後まで読んでくださり、どうもありがとうございました。
コメント