メジャー史上初のW規定達成を果たした大谷翔平選手。
投手で15勝9敗、防御率2.33。
打者で打率.273、34本塁打、95打点。
圧巻の”リアル二刀流”だった2022でした。
シーズン終了後の単独インタビューNumber1062号を引用し記事を書きます。
ちょっと長いですが、インタビューから今季の大谷翔平選手の魅力を読んでいきましょう。
メジャー5年目で二刀流本番
「メジャー5年目が最初のピーク」と自ら語ったシーズン。最初のピーク来たか?
大谷:どうなんでしょう。悪くはなかった。体調がよかったのが一番。
今年はマウンドで何の不安もなく投げられることがどれだけ幸せかをずっと感じていました。
気持ちよく腕を振れていました。
スライダーの質も向上して、まっすぐの球速も上がってきました。
実戦で多少の怖さはあるのでいきなり上げるのは難しかった。
(トミージョン)術後の慣れはまだ必要だと思う部分もありました。
それでも100マイル(約161km)の球が増えていることが確実に段階を上がった何よりの証だと感じました。
もっともっと上がったら、もっともっと野球がおもしろくなると思います。
まずはじめに、トミージョン手術の影響から、コンディション重視で我慢の投球をしてきたことがわかりますね。自分の肘をいたわりながら球種を選び、その制約の中で打者を抑えてきたことがわかります。彼はここで語っていませんが、エンゼルスは貧打で守備も弱い。援護されないチーム力で勝てたゲームをいくつも落としています、それでも不平を一切言わない。本当に男らしいです。
100マイルが出せるのに、今年、フォーシーム(まっすぐ)が少なかったのはなぜ?
大谷:負荷が高くなるというのが一番の理由。
投げていればわかりますが90マイルと95マイル、100マイルはそれぞれ別次元の負担がある。
90マイルなら全球まっすぐでも問題ないんです。
100マイルを100球投げると、これは身体にとっては過負荷になる。
それを1年間、それを週に1、2度続けていくのは難しいという判断。
「100マイルばかり投げることはしない」ここ一番でギヤを上げてファストボールを投げる。それ以外ではボールを動かす変化球(それも超高速で)で空振りをとるという構成ですね。
疲労や筋肉の損傷を減らし消耗しないというコンディショニングをよく考えています。素晴らしいセルフマネジメントです。
変化球は「妥協」なのか?
スプリット(※垂直に落ちる球)はかなり減りました。それも負荷がかかるからなのか?
大谷 いや、それはスプリットがシンカー(ツーシーム)になったということ。
そもそもスプリットもシンカーに近い握りで投げていた。
シンカーとスプリットが別々になって、よりスピードの出せるシンカーとスプリットを使い分けている感じ。
※シンカー:落ちながら右打者に食い込んでくるボールのこと、大谷のシンカーは超高速なのでターボシンカーと言われる
※スプリット:人差し指と中指で挟んで投げるフォークボール、野茂、佐々木、千賀投手の得意球
※スライダー:ボールのリリースの瞬間に、切るようにスピンをかける。手首の力を使って捻るように投げる変化球。ダルビッシュ、斎藤雅樹、伊藤智仁などの名投手の決め球。横に曲がる、縦に落とすなど変化のバリエーションが多い。
※カットボール:リリースの瞬間に、手首の力は使わずにストレートと同じ投げ方で指先(主に中指)の力のみでボールにスピンを与えて投げる変化球。
昨年、「カットボール=妥協」と表現たが、今年のシンカーも妥協か?
大谷 そこはまったく違う。
去年は、負担をかけたくないからカットボールを投げていた。打たれてもしょうがない感じで投げていた。
だから妥協と言った。
しかし今年のシンカーに関しては負荷の問題ではない。。
スプリットにシンカーが加わり、明らかに投球の幅を広がった。
大谷翔平の変化球はスプリット、数種類のスライダー、シンカーがありますが、いずれも超高速の変化球です。緩急でタイミングを外すというよりも、高速で鋭く曲がる、落ちる魔球です。打者は本当に打てる気がしないのではないでしょうか?
昨年は肘を守るための妥協のカットボールだったのが、今年は打者をキリキリ舞いさせる驚愕の魔球だったわけです。
「バットを折りにいく感じ」「バリエーションが増えた」
カットボールは今年も妥協という感覚がまだあるか?
大谷 カットボールもよかった。
球速は92マイルから95マイルまで出ていた。
去年はバットに当てさせるというイメージ。今年はバットを折りにいくくらいの感じになってきた。
あなたのツーシームやカットボールは、打たせて取るための動かすボールとは程遠い強さですね?
大谷 まっすぐ、スプリット、スライダーの3つで抑えるピッチングもいい。
しかし他にもいろいろできたほうがいいじゃないですか。
スライダーは横に曲がるスライダーもあれば、縦に落ちるものもある。
スライダーをひと括りにして狙ってくる打線だと、そのスライダーが2種類あるだけで絞れなくなる。
いろんなスタイルがあっていい。
まっすぐとスプリットのみで抑えていくのもアリだし、スライダーがやたら多い試合もアリ。
まっすぐばっかりの試合があってもおもしろいなと思う。
球速が増したことでパワー・カットボールになり、バットを折ったり打球を詰まらせる威力になったようですね。スライダーのバリエーションが増えたことは投球の幅を大きくしたようです。そのことを次に答えていますね。
多彩なスライダー
横に曲げるスライダーの投球で腕を下げて投げたのには驚かされました。
ヒジを下げるなどのフォームを変えるのはケガのリスクを招きませんか?
大谷 腕の位置は、腕だけを下げているわけではないです。
体幹の角度から変えていますから、軸の向きが変わっているというだけなんです。
むしろ、違う動きをしたときに腕が遅れてこないかどうかがケガにつながる一番の問題点。
そこには注意して投げてきました。
今季、特徴的だったのが横に大きく曲がるスライダーでした。ダルビッシュ、田中将大、黒田博樹のようなスライダーとでも言いましょうか。
※フロントドア(右打者が一瞬デッドボールと錯覚するスライダー)
※バックドア(右打者の外角ボールのコースからストライクに入ってくるシンカー)を投げるようになりました。
大谷翔平投手は超剛速球なのに魔球をいくつも持っているわけです。
いやぁ、本当にすごいんです。
速球王としての大谷はどうなる?
フォーシーム(速球)ては球速が増すほど負担がかかるようですが、この先、どんなボールにしたいのか?
大谷 スピードは武器なので、そこは一番の強みかなと思います。
(163kmの)マックスも上げられるものなら上げていきたいと思っています。
クローザーならもっと上げてもいいと思うが、(球数が多い)先発がそこばっかりを目指してもね。
だから、ここ一番で出せればいいと思っています。
大谷翔平選手は本当に頭が良いので、自分に期待されていること、自分がやりたいことをよく理解しています。
彼が最重要視するのは「自分が健康で毎日試合に出ること。投げた試合は全部抑える。ホームランを打ち、脚でも見せる。そのためにケガをしない」ということ。
球速を上げようと決して無理をしないんですね。
おそらく今も100%で投げているのではなく70~90%の範囲で安全運転しているのでしょう。
大谷翔平選手って本当にすごいですね。
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